理事長挨拶・設立趣旨と私たちの姿勢
理事長就任のご挨拶
日本炎症免疫薬学会の設立にあたり、理事長の任を受けました平田一耕と申します。本学会は、複数の研究会や学会の薬剤師部会のメンバーが協力して設立されました。炎症免疫疾患は、自己免疫の問題によりどの臓器に炎症や障害が起きるかで病名が決まりますが、その経路は複雑に関連しています。そのため、複数の診療科を受診する患者も多く、治療薬や副作用予防のために多くの処方がされるため、薬剤師には広い対応が求められています。
悪性腫瘍に関しては、がん基本法の制定に伴い、抗がん剤治療から緩和ケアの治療において薬剤師が活躍しています。近年では、外来における診察前の薬剤師の関与が認められています。炎症免疫疾患は主に免疫抑制薬を使用しますが、抗がん剤と同様に副作用に注意が必要で、高額な薬剤が多く上市されています。また、小児期に発症することもある慢性疾患であるため、ライフステージに合わせた薬学的ケアが重要です。そのため、有効性を十分に確保した上で、安全性、バイオ後続品を含めた経済性、生活への影響、医薬品のデバイス等のその他の影響を考慮した薬物治療が求められます。私自身、患者の薬学ケアに関わるにあたり、患者から薬剤師の関与を日本全国に広めてほしいというエールを頂いてきました。
本学会では、薬剤師のさらなる取り組みを推進し、学術的な検討やエビデンスを構築することで、最終的には患者やその周辺の方々のエンゲージメントを高めることを目的として取り組んでまいりたいと思います。ぜひ一緒に様々な課題に取り組みませんか。

日本炎症免疫薬学会
理事長
平田 一耕
学会設立の背景
現状と課題として、私たち薬剤師は、関節リウマチのみならず、膠原病、炎症性腸疾患、および神経免疫疾患など、広範な炎症免疫疾患の薬物治療に関わる必要があります。これらの疾患は薬物治療としてオーバーラップする部分が多く、有効性、安全性、経済性、生活への影響に合わせた質の高い薬物治療を行い、患者が「病気と共存しながら、いつも通り・普段通りの生活を送る」には、複数の領域に精通していることが求められます。しかし、各疾患ごとにガイドラインが存在し、日々医療が進歩している現状から、一人一人の薬剤師だけでは、知識のアップデートを含めた対応が困難になりつつあります。また医療の発展のために複数の医療施設でのデータを用いた薬剤疫学や相互作用に関する学術的な検討が必要になっています。
このような背景から、本学会は関節リウマチ領域の研究会であるJRAPP(日本リウマチ薬剤師研究会)、関節リウマチを含む膠原病領域の研究会であるPRANET(リウマチ・膠原病薬剤師ネットワーク)、日本炎症性腸疾患学会のMSセミナーのメンバーを中心として、2024年度に設立しました。本学会は炎症免疫疾患に関わる病院、診療所、調剤薬局の薬剤師が一堂に集まる唯一の学会であり、知識と経験を共有し、学術的な成果を作り、臨床にフィードバックする場として、各関連団体と連携しながら医療と薬学の発展に貢献していくことを目指しています。
学会の理念と目標
本学会は主に病院、診療所、薬局、教育機関の薬剤師が中心となり、製薬企業、行政等に関わる皆様と一緒に関節リウマチ、膠原病、炎症性腸疾患などの炎症免疫疾患患者のエンゲージメントを高めるための学会です。

図1, 日本炎症免疫薬学会が目指す 階層別の役割と目標